エクリプスフェイズ キャラクター作成術
AGS様更新
AGS様で更新がありました。蔵原様によるエクリプス・フェイズのキャラクター作成術です。
『エクリプス・フェイズ』キャラクター作成術:「軍艦」と「パズル」と「古典」: Analog Game Studies
EPの価格
なお残念ながら、無料で公開されている「簡略版ルールブック」(QSR)のみではキャラクター作成はできません。EPの公式サイトから「Eclipse Phase Core Rulebook」をお買い求めいただきたく、お願いします:http://www.eclipsephase.com/releases
そういえばxenothも、これまで、きちんと書いておりませんでしたが、Eclipse Phaseは、簡易版だけではなく、全ルールブック、サプリメントが、無料でコピー配布可能となっています(!)
その上で、pdf版および本の形で発売もされており、気に入った人は購入してくださいというモデルになっております。どんどん商品を見てもらって便利に使ってもらって、ふれる人を増やすことで、利益をだそうという形ですね。
EPにおける評判経済*1を先取りするような、新しい試みだと思います。
キャラクターのConcept
これと同じくEPのキャラクター作成も、まずはプレイの方針から始まります(EPルールブックの120頁にある"concept"〔概念〕のことです)。どんなプレイスタイルを行うのか、攻めるか守るか、攻撃力か機動力か、そこからキャラクターの方向性が演繹的に導かれます。力技で相手を粉砕するのか〈→ファイター〉、策略で労せずして勝つのか〈→マジックユーザー〉、敵の目を盗んで重要な資材を略取するのか〈→シーフ〉、目先の事柄ではなく理念を尊重するのか〈→クレリック〉......
のっけからもうしわけありませんが、EPルールブックの120頁にあるConceptは、「プレイの方針」を決めること、では、ありません。
Conceptは、キャラクターが「なんかファイター、強いファイター」といったゲームの道具ではなく、れっきとした個性を備えた人間であるという前提に立ち、どういう生い立ちで、どういう性格なのかを最初に決めようというものです。
そのためには、あなたのキャラクターはれっきとした個性とアイデンティティの概念がなければなりません。少なくとも、キャラクターのコンセプトを一言でまとめられるべきです。たとえば、「喧嘩っぱやい幼生ボディの亡命考古学者で怒りを抑制できない性格」とか「スリル好きの社交に生きるキャラで、陰謀論や神秘に危険なほど魅せられている」などです。
This means your character needs a distinct personality and sense of identity. At the very least, you should be able to sum up your character concept in a single sentence, such as “cantankerous neotenic renegade archaeologist with anger management issues” or “thrill-seeking social animal who is dangerously obsessed with conspiracy theories and mysteries.”
というわけで、EPのキャラクター作成は「どんなプレイスタイルを行うのか、攻めるか守るか、攻撃力か機動力か」を決めるところから、は、始まりません。
そうしたゲーム的な機能、ファイター系/シーフ系……D&D4thに習うなら制御役・指揮役・防衛役・撃破役といったゲーム的な目的、性能から最初に決めてからキャラ付けをするゲームもあり、キャラ付けを先にするゲームもありますし、どちらがいいかはゲーム次第、状況次第となりますが、とまれ、EPのキャラメイクにおけるConceptはキャラクターの設定であって、ゲーム的なプレイスタイルではないことを確認しておきます。
BackgroundとFaction
Conceptで、どんなキャラクターを作るかを選んだら、次に、そのキャラクターの背景(Background)と、所属社会(Faction)を決定します。
実質的に、この2つを選ぶことで、キャラの設定的な方向性が、かなり決定するため、非常に重要なところです。
背景は、キャラクターの生い立ちで、特定のコロニー、国に生まれ育った、とか、あるいは、宇宙の漂流生活をしているとか、知性化動物であるとかと、新人類培養実験の失敗作とかいった楽しいものが並んでいます。
社会(Faction)は、どのような社会、勢力に身を寄せているかで、アナーキストや、アルゴノート(技術主義者)、上流階級といったものが並んでいます。
これらを決定すると、長所・短所、一般的なモーフが同時に決定されます。
たとえば、タイタン社会を選ぶと、技術・学術系スキル2つに+10、ネットワーク:Autonomistに+20といった具合です。
同じように、一般的なモーフを見れば、たとえば、その社会や出身の人に、どんなモーフ、肉体、外見の人がいるかがわかります。
こうしたデータは、このあとに習得するスキルや装備構成の指針ともなります。
例えば戦闘用技能に修正があったり、戦闘用モーフが指定されてる背景や社会は、戦闘系の人が多い世界であり、戦闘型キャラに向いている、というわけです。
例えばこうです。あなたは「戦艦」のような「ファイター」を作りたいと仮定します。「Eclipse Phase Core Rulebook」のPDFルールブックを使って試してみましょう。
◇ 戦艦ですから強力な主砲が必要です。ミサイルで標的を爆砕したい? よろしい、では「missile」のキーワードで「基本ルールブック」(Eclipse Phase Core Rulebook)を検索しましょう。「追尾兵器」(Seekers)の項目が見つかります(基本ルールブック339〜341頁にあります)。
こうした作り方は、EPの基本ルールブックを読む限りにおいては、推奨されていません。
「戦艦」で「ファイター」だから、強力な武器を買う、というのではないのです。
まず、その人が、どんな生い立ちで、どのような社会に生きているか。
最初に決めるべきはそれで、そうしたConceptに合わせて、どのような武装が自然か、という風に考えてゆく、というわけです。
もちろん程度問題で、キャラコンセプトから装備を決めるのも、ゲーム的な機能から逆算してキャラコンセプトを決めるというのも両方ありです。
その上で、EPというゲームが、戦闘メインのゲームではなくて、社会におけるキャラクター性を大事にするタイプのゲームであるため、キャラクターの背景、社会性が重要になっているという点は強調しておくべきでしょう。*2
設定と「落とし穴」
ここからは要注意です。むしろ「基本構想」「ギミック」よりも時間をかけた方がいいでしょう。EPの世界設定にはデザイナーのしかけた「落とし穴」があります。そこを見落とさないように。
この「穴」とは不備ではありません。キャラの「背景」(background)に合わせてキャラメイキングを進めるとき、その背景世界についての解説を参照しないと、不自然なキャラになってしまいます。その点を(当然了解しているとして)デザイナーは明示していない、そこが「落とし穴」なのです。
蔵原氏は、このように書いていますが、これは蔵原氏のキャラメイク解説の順番がおかしいからです。
基本構想、ギミックを作ってから、背景との整合性を考えるから、矛盾しやすくなります。
EPルールブックに記載されている順番では、まず、キャラクターのコンセプト、すなわち、(ゲーム的な機能ではなく)どのような人間であるか、を、まとめます。
次に、そのキャラクターの生い立ちや所属社会をデータ的に決定します。
そのあとに、スキルや装備……蔵原氏の言うギミックを取るわけです。
その上で、背景世界の読み込みというのは人それぞれで、矛盾が起きたり、GMや他のプレイヤーとの意見が異なる場合もあるでしょう。
しかし、それを「落とし穴」と捉える必要はないでしょう。
むしろ、それこそが好機です。
たとえばタイタン社会の場合
EPルールブック106頁によると、タイタン市民は成人になった時点で何らかの社会奉仕(主に兵役/治安部隊への配属、原文には"compulsory civil service at the age of majority, with an emphasis on military and security forces"とあります)に従事する義務があるのだそうです。ルールブック中の設定ですと、現実のスイス(2011年現在)のように、その家屋に国防用のライフルを備え付けている人がいるのだとか※。ですからタイタン市民であれば、徴兵忌避者を除けば一応は武器の扱い/戦い方の基礎を知っていて当然ということになります。なにしろ公式設定によれば、タイタン連邦は国防のために小型衛星を三つ動かしてきて(!)本星の軌道上に置いたそうですから、この国の人々が軍事に寄せる関心は並々ならぬものがあると推測できます(ルールブック107頁の「PHOEBE, SKATHI, AND ABRAMSEN」を参照)。さらにまた106頁の解説によれば、タイタンの主要言語はノルウェー語、フランス語、ドイツ語、デンマーク語、北京中国語等なのだそうです。タイタンは北欧国家をモデルの一つとして設立されたとあるのですから(79頁)、北ヨーロッパ系の言語が主流なのは当然です。
さて、蔵原氏の記事では指摘されていない点ですが、重要なこととして、「同じルールブックを読んでいても解釈が異なる場合がある」ということです。
たとえば、蔵原氏と同じルールブックを読んだ上での、xenothの解釈は以下にようになります。
まずタイタン社会は、EPにおける外惑星連合の一員です。
外惑星連合は、早くから宇宙に飛び出した人々であり、細かな政治や利権を気にせずに、科学技術で何でも解決しようとする人たちです。
お金や地位、安全が大切なら、宇宙開拓なんかしないわけで、ロマンと冒険、そして科学技術信奉の人たちなわけで、ルーズな社会を持って好き勝手やっています。
そのなかで、タイタンは、割と、政治や社会の結束が強いものとして設定されています。
その上で、「国防のために小型衛星を三つ動かして」来ているのが、「軍事に寄せる関心」が並々ならぬもの、かは、また微妙です。
アナーキストも、大国や権力者の干渉に対しては、団結するものだからです。また、その方策が、政治的だったり戦艦作ったりというものではなくて、衛星を持ってくるというのも、技術者好みの方法論ですね。
要するに、大国や権力者が干渉してきた時に、新兵器で対抗するというのは、アナーキスト/ネットワーカー/オタクの標準的な反応としても理解できるというものです。
タイタンのもう一つの特徴としては、首都に巨大な大学を擁しており、無数の研究を行なっているという点です。人口の20%が学生であり、留学生も数多いとあります。
けれども、もしここで日本語しか話せず、社会奉仕も体験していない二十歳過ぎのタイタン市民を作成したとしたらどうでしょう? ルール上は可能であるにしても、その人は(ゲーム世界において)実在可能なのでしょうか。平均的(と仮にしますが)日本人しかいない環境に、ノルウェー語以外は解さず、しかも日本社会における市民の義務を果たしていない人が孤立無援で放り込まれたとします。その人はその社会で円滑に暮らしていけるのでしょうか? あるいはその人は「自分はれっきとした日本人だから、自分に市民権をくれ」(とノルウェー語のみで)主張した時、周囲の人はどう反応するでしょうか※? ルール上は可能だとしても、社会状況との整合性が合わないキャラを論拠なく押し通すのはロールプレイとは言えません。ただの我儘、駄々っ子です。
さて、タイタン社会出身のキャラは、本当に、ノルウェー語と、武器技能が無いと不利になるのでしょうか?
まず非常に重要なことですが、私がGMだったら、プレイヤーが明らかに不利になると思われるキャラメイクをしていたら、そのことを告げて相談します。
こうした問題は、キャラメイク単体で完結することではなくて、GMとPL、他のPLとの相談の中で解決するというのが一番先に考えなくてはいけないことです。
その上でこの場合ですが、まず兵役につく=武器技能を持っている、か、どうかという点は解釈の余地があります。
例えば社会でタイタンをとっても、特に武器技能に修正はもらえません。
これが、本当の軍事国家であるJovianだと、所属するだけで武器技能に修正がつくので、タイタンの兵役はそこまでのものではない、と、みなすことができます。
現代戦において、職業軍人を育てるというのは長い時間のかかる高度な教育の賜であり、2〜3年、兵役もしくは保安任務についたからといって、戦闘のエキスパートとしてスキルを習得したとは言えないのかもしれません。
もう一つの解釈として、兵役についていないというのがあります。
設定にもある通り、タイタンには良心的兵役忌避者が存在します*3。
良心的兵役忌避者と書いてあるくらいですから、現代的な、兵役につかない代わりに、それ以外の公共奉仕をする権利が認められていると考えられます。兵役についていない=市民の義務を果たしていない、とはならないことを注意。
良心的兵役忌避者の扱いは、国や時代で様々で、タイタン社会で、どう扱われるかは明記されていないのでわかりません。
そのあたりはGMの解釈次第ですが、私は、これまで述べたようなタイタン社会の気質(特に大学があって学生が多い)ことから、さほど問題はないのではないかと思います。
言語については、ネットワークによる自動通訳が実用化された世界ですから、実質的な問題はないでしょう。
留学生などはノルウェー語が母語とは限りませんし*4、ノルウェー語が母語でない人が、強く差別されるような閉鎖的な社会であるようには見えませんでした。
「孤立無援で放りこまれたら」とありますが、EPでは、普通にキャラメイクすれば、各種REPやネットワーク技能があるので、孤立無援の人は存在しません。
また余談ではありますが、日本における市民権は、日本国籍を持っている人に与えられます。様々な生い立ちによって日本語がしゃべれない日本人の人がいても、暖かに受け入れたいものです。
実際には、なかなかそううまくはいかないでしょうが、そうならないようにしたいものです。
では「社会状況との整合性が合わないキャラ」をどう処理するか? 簡単です。「整合性が合わない」キャラがなぜ実在可能なのか、関係者一同を納得させるに足る実証的根拠があればいいのです。その「根拠」はどこにあるかって? 簡単です。歴史学、心理学、社会学などの概説書を参照するだけですぐに見つかります。あるいは人間性を描いた不朽の古典、例えば東洋史なら『史記』『漢書』『三国志』、西洋史なら『聖書』『対比列伝』『ガリア戦記』等を読めばよろしい。長く愛されてきた作品の深みを十分に噛み締めましょう※。
強く助言しますが、この態度は危険です。
例えばこういう状況を想定しましょう。見かけは普通のタイタン市民ですが、実はテレパシー能力を備えたキャラクターがいると仮定します。普通の人にはテレパシーなんて不可能です。ではなぜその人物は例外なのか? そうです、実はその人はタイタン市民を装っている外国のスパイで、特別な医学的処置を受けた後でタイタン社会に潜入し、無邪気な同僚の心を勝手に覗いているのです! 実在したマタ=ハリやキム=フィルビー等に関するスパイ事件を思い返せば「超能力スパイ説」にはそれなりの根拠があると言えます。日本に関する話としては、かつて北朝鮮に拉致された人は日本に潜入するスパイの教育をさせられていたそうですね。
まず設定的な話をしますと、タイタン人にも超能者はいますし、ルール敵にも超能力を取得することができます。
次に、私がGMなら、スパイの超能力者はPCとして受容しますが、それは別に、マタ=ハリやキム=フィルビーの資料を持ってこられても関係ありません。
また、超能力スパイはやめてね、という時は、マタ=ハリの資料を持ってこられても困ります。
なぜでしょうか?
まずTRPGの架空世界においては「実証的根拠」は存在しません。
架空世界の設定を解釈する際は、どうしても人それぞれ理解が異なりますし、それを理論で完全に埋めることはできません。
「『ガリア戦記』でこうなってるから、マタ=ハリがいたから、俺のタイタン人の設定は正しい」というのは、どこまで言っても議論の余地があります。
それを言うなら、現実の歴史や社会の解釈も、少なくとも卓上で短時間で行う分には、理論で完全に埋めることはできません。
そもそも、一番ありそうな話ですが、相手が「ガリア戦記」を読んでなかったらどうするのでしょうか。
「今から読め」も「読んでないおまえにはわかるまいが俺の設定は正しい」も、喧嘩になるでしょう。
キャラクターに深みを出すために参考資料を参照すること自体は良いことだと思います。
ただし、それを「関係者一同を納得させるに足る実証的根拠」として押し付けてはいけません。
さらに、設定上根拠があることを実証することと、皆で楽しめることも、また別です。
GMが特定のキャラや設定を拒否する理由は、「実証的根拠」の有無ではなく、そのシナリオ、そのメンツ、その卓で扱えいずらいキャラである場合が多いです。
「超能力者がいると、今回のシナリオが破綻するからやめてほしい」とGMが思う時とかですね。
論破ではなく共存
TRPGとは、皆で遊ぶゲームです。
そこで重要なのは、「説き伏せること」ではなくて、「共存すること」です。
「こういうキャラやりたいんだけど」
「設定的にここがおかしいんじゃないかな」
となった時に
「おかしくない! それは「ガリア戦記」を読めばわかる」
というと、喧嘩になります。
「あれ、どうしたらいいかな。一緒に考えてくれないか?」
と言う態度が大切です。
矛盾を指摘するときも、「ここがおかしい」だけでなく、「ここが矛盾してるのは、こういうことなんじゃないかな?」と発想を広げたほうがうまくいきます。
そういう風に考えると、設定的な矛盾は「落とし穴」ではなくて、むしろ「好機」なのですね。
実際、多くのTRPGのキャラメイクには、わざと矛盾が織り込まれる形にして、それをプレイヤーが統合することで、キャラクターに深みを与える、というのが理論化・実用化されているほどです。
サンプルキャラの勧め
これまで長々とEPのセッションで起きうる問題を書いてきましたが、実はここに書かれていたことの多くは、サンプルキャラを使うことで解決できることばかりです。
蔵原氏は、キャラメイクを軍艦に例えましたので、私も真似をして、サンプルキャラを軍艦、あるいは量産型兵器に例えようと思います。
軍艦でも戦闘機でもなんでもいいんですが、多くの軍隊では、量産される制式装備、兵器が存在します。
なぜでしょうか? 理由は色々あるでしょうが、以下の3点ではないかと思います。
- すぐ作れる
- 性能がわかっており研究がゆきとどいている
- 1,2より状況に対応がしやすい。
すぐ作れる、は、軍事において非常に重要です。即応性ですね。
サンプルキャラの利点もそこにあります。
たとえば、コンベンションとかで初顔合わせの時、EPのような1000CPを割り振るタイプのゲームで、ゼロからキャラメイクをするのは非常に大変です。
そういう時は、サンプルキャラから選んでもらうことで、すぐ遊べます。
また、「戦闘系が足りない。誰か戦闘系やって」といった時も、サンプルキャラを選ぶことで、素早い対応ができます。
次に、性能が分かっており、研究が行き届いてること。
軍事において、新兵器が、その性能を完全に発揮するまでには、たいてい時間がかかります。
特に革新的な新兵器であればあるほど、運用からのフィードバックを含めて、戦術が確立するまでには時間がかかります。下手すると、「使い方がわかったころには戦況が変わっていた」なんて場合もあります。
量産型であれば、性能と運用法が分かっているから、そうした経験値に応じた実力を発揮できるわけです。
これもサンプルキャラに共通します。
サンプルキャラの攻撃力や性能は、GMもPLもお互いわかっていますから、運用も対応もしやすいわけです。
兵器と同じく、サンプルキャラも使う人次第の面があり、同じスキル・装備構成でも、プレイヤー次第で戦闘力が跳ね上がったりします。
また表面的な設定が同じでも、性格やロールプレイも、がらりと変化します。
サンプルキャラをやりこむことの楽しさが、そこにあるわけですね。
最後に、状況への対応しやすさ。
軍事においては、様々な戦況があり、それに合わせた戦力の運用が必要になります。
砂漠で戦車と戦うのか、都市でゲリラと撃ちあうのかで、装備も部隊も変わるわけです。
TRPGも同じことが言えるでしょう。
セッションをする際のシナリオに応じて、シナリオに向いたキャラクターもいれば、明らかに無理があるキャラクターもいます。
もちろん、「どんなキャラでも大丈夫なシナリオ」を作ることもできますが、特定のシチュエーションを掘り下げたシナリオというのも、また楽しいものでしょう。
そうした時は、サンプルキャラの出番です。
GMは、サンプルキャラを念頭においてシナリオを組み、PLもサンプルキャラを選ぶことで、キャラクターに合わせたより深いシナリオができます。
物語性の強いゲーム、例えば『深淵』なんかは、そうしたサンプルキャラを前提としたシナリオが多い傾向にあり、独特の雰囲気、面白さがあります。
キャラクターと関係性
同じ量産型兵器を使えば、誰がやっても一緒、などということがないのは言うまでもないでしょう。
指揮する側によって、戦況によって、戦争は千変万化の姿を見せますし、そこには様々な個性があります。
サンプルキャラも同じです。
TRPGのセッションとは、自分一人でやるものではなく、GMや他のプレイヤーと一緒に遊ぶものです。
キャラクターというのも、同様に、他のキャラクター、NPC、世界との関係性の中に成立することになります。
そしてそうした関係性は、まさしく一期一会であって、同じキャラクター、同じメンツ、同じシナリオであってさえ、毎回、様々に違った姿を見せることは、TRPGを遊んだ経験がある方ならご存知でしょう。
そうした関係性の部分は、サンプルキャラのデータに縛られるものではありません。
また関係性は、ゲーム内部だけではなく、プレイヤー同士の関係性も重要です。
余談ですが、本論筆者はサンプルキャラクターを使うプレイを好しとはしません。サンプルキャラが役に立たないという意味ではなく、むしろキャラ作成時の指針としてモデルとして、大いに意義があるとは思います。優れた規範に準拠するのは上達の第一歩です。でも手放しで受け入れるわけではありません。とどのつまりサンプルキャラを使うプレイとは、言わば他人のプレイ方針に束縛されるようなものです。人に強制されたプレイ方針なんて面白いと思いますか※?
(※ごくたまにサンプルキャラで市販シナリオをプレイした事もありますので、完全否定する気はありません。ただ単に既成のキャラに感情移入がしにくいだけのことです。完璧な味付けのコンビニ弁当と彼女の手作り料理、どちらがおいしいと思うか。前者の人もいれば後者の人もいる。それだけの話です)
この蔵原氏の意見ですが、コンビニ弁当と、彼女の手作り料理、どちらがうまいかは、料理だけでは決まりません。関係性と環境が重要です。
彼女と一緒に散歩してたら、ふと桜が咲いていた。ちょっとコンビニによって弁当を買って、一緒にベンチで食べて花見と洒落こんだ。そんな食事は楽しいでしょう。
そんな時に、「手料理に比べて感情移入しにくい」とか言う人もいないでしょう。大切なのはお互いの心であって、調理された食材自体ではないのです。
デートコースやプランによって、外食の時もあり弁当の時もあり、愛情料理の時もあり、自分が料理する時もあり、どれが良くて、どれが悪いということはないんじゃないかと思うのです。
TRPGも、また、同じ。
*1:これまで信用経済と書いてましたが、よく考えたら信用経済は現金決済でなくてクレジットカード等を使えるような経済、という意味の用語でした。ご指摘をいただいて修正します
*2:なおEPにおいて重要、必須スキルは、p176にコラムがあります。それによるとFray(回避)、Networking(ネットで援助を得る)、Perception(感知)の3つだそうです。EPが戦闘メインでなく、交渉・社会が重要であることが伺えます。
*3:蔵原氏が引用しているCompulsory civil service at the age of majority, with an emphasis on military and security forcesの直後に、"except for conscientious objecters"良心的兵役忌避者をの除く、とあります。どうせなら、ここまで引用すればいいのにと思います。
*4:なお、私も機械翻訳の可能性については様々な意見がありますが、人間以上の知性を備えたAIがいる架空の未来世界においては、信頼できる自動翻訳があるのは理解できます。