TRPGが 「GMの空気を読もう」という決心を育てるだけのゲームになるのは、なぜ問題なのか?

経緯

TRPGが 「GMの空気を読もう」という決心を育てるだけのゲームになるのは良くない、という指摘はすごく面白いと思った。確かにそうだなと思うし、あれ、それじゃいけないのかな? と判らなくなったりしました。少し考えてみないと。
http://twitter.com/pumimin/status/209652679696322560

こちらの伏見氏の発言に、私は以下のように答えました。

TRPG以前に、理由を知らせずに、自身の意図と離れているものに罰=失敗を与えることで、一方的に自分に従属するように仕向けるのは洗脳の一種で、教育とは相反するものだと理解しています。
http://twitter.com/xenoth_hatena/status/209654184658739201

ちょっとわかりにくかったかもしれないので、掘り下げて書いてみます。

「空気を読むしかない」ゲーム

さて空気を読むこと自体は悪いことではありません。一緒に楽しく遊ぶためには、互いの気持ちをはかることが大切です。
ここで言っている空気を読むは以下のような状態です。

ゲーム中の目標がしっかりしていない時、単にGM(あるいは声のでかいプレイヤー)が考えた「正解」に、他の人が振り回されるだけのゲームになることをどうやって防ぐでしょうか?
答えは、防げないというものです。
結局、それは、GMの空気を読むだけのゲームになります。

・明確な正解がGMの頭の中に存在する。
・だが何が正解かを客観的に推理することができない。
・ゲームを進めるためにはGMの顔色を読むしかない。
・読み損なうと失敗する。


ツイートでも書きましたが、これは、洗脳の手法そのものなのです。

洗脳の手法

典型的な洗脳の手法は以下のようなものです。


・対象は不快感を与えられますが、その理由がわかりません。
・不快感を与えるのは指導者(あるいは、指導者に従うもの)です。
・しかし、指導者は自分では何が正しくて、どうすべきなのかは、きちんと言いません。謎めいたことを適当に言います。
・結果、対象は不快感を避けるための合理的な思考ができません。
・唯一できるのは、指導者の顔色を見て常に気に入られようとすることだけです。
・そのようにして対象が指導者に従順になった時に、対象を褒めてやれば、指導者への従属は強化されます。
・最終的には、対象が自分で、指導者につきしたがう理由を作り出します。


DV、家庭内暴力とかも同じですね。理不尽な暴力をふるいまくって自分の顔色を読ませて、時々抱きしめてあげる、という。


TRPGって、これが簡単にできてしまうという問題があります*1
GMは、PLの理解できない理由で、失敗、不快感を与えることができるわけです。一人のPLの行動を、全体の不利益である、と断ずることもできます。
そのようにして悪意もなく無意識で、PLを支配することができます。他者を支配することは、ある意味、気持ちのいいことなので、無意識にそうなってしまうのは非常に危険です。


それを防ぐためには、どうしたらいいでしょうか?
自主性というのは、話し合いの基盤があって議論も反論もできるところに育ちます。
そのためには、指導者は「自分は、これはこのような理由で正しいと考える」というのをはっきり表す必要がありますし、それに対して自由に質問できたり反論できたりする必要があります。
だからこそ、デザイナーは、「このゲームはこう遊んでください。これが楽しいのです」ときちんと述べ、GMも「今回のセッションは、こんなセッションで、こう楽しいです」というのを明確にする必要があるのです。
GMの権限はここからここまでというのも明確にする必要があるのです。
明確にした上で初めて、それに従うことも、意見を出すことも、反対することも自由になります。

*1:書き添えておきますと、別にTRPGに限らず、指導者のいるゲームや集団では常に行うことができます。だからこそ、そうしないように考える必要があります。