試行錯誤の形

昔の試行錯誤

紙魚砂さんが、書かれているように、昔は、特定のシステムで様々なスタイルのプレイを試行錯誤するということが多かった。


これには、様々な面がある。


良い面としては、プレイ経験やプレイ資産を生かせるということだ。
GM、PLともに親しんだシステムであるなら、ルール知識、プレイ知識が生かせるし、同じ世界観でプレイするならば、過去のキャラクター、キャンペーンの設定なども引き継げる場合もあるだろう。


別の面としては、単にそれに向いたシステムが無かったので、という消極的な理由もある。
T&T文庫版で遊んでたプレイヤーが、ホラーな話をやりたくてもホラーに向いたシステムが売ってない、あるいは売ってるけど買えないという場合、T&Tでホラーをやったりするわけだ。


いずれにせよ、試行錯誤をするのであれば、システムの特性を把握することは大切である。

現在

現在は、第三世代TRPGのシステムが増えたことで試行錯誤が減った、というのが紙魚砂さんの意見だが、個人的には、そうは思わない。


まず先人が様々に試行錯誤をした結果が、今の数多くの第三世代TRPGシステムに生かされてるということだ。
古いD&Dを改造して、伝奇アクションをやりたいとしよう。
その時、D20モダンなり、ダブルクロスなり、ナイトウィザードなり、デモンパラサイトなり、真・女神転生なりをプレイすることは、確実に役立つだろう*1
で、そこまでやったなら、わざわざD&D改造じゃなくて、ダブルクロスをそのまま遊ぶことになったとして、それは普通のことだろう。
もし、それを指して「最近のTRPGプレイヤーは試行錯誤が足りない」というのであれば、的外れとしか言いようがない*2


次に、たとえば、ダブルクロスなら、各種リプレイだけで、シリアス、コメディ、ラブコメ、アクション等、様々な雰囲気、様々な世界設定が揃っている。少年少女が頑張る話もあれば、渋い大人の話もある。動物や神々、機械生命だって、遊ぶことができる。それらをベースにプレイヤーが試行錯誤する余地は大きく存在する。
ステージの概念を持ち、リプレイ展開が幅広いダブルクロスは、そのへんのサポートが際立っているが、別にナイトウィザードでもデモンパラサイトでも、同様の工夫、試行錯誤はできるだろうし、様々な卓でされているだろう。

道具を見極めること

TRPGの面白さは、PLサイドが工夫することでもある。
失敗経験含めて、試行錯誤は楽しいものだ。


が、試行錯誤にもやり方がある。


TRPGのシステムというのは道具だ。道具を深く理解した人が、道具を使いこなす。
飾り切りをするなら、中華包丁ではなくて、小さなナイフや、さらに専用の道具を使うのがいいだろう。TRPGでも、同じように目的に合わせて、システムを選ぶのは基本中の基本だ。
無論、中華の達人の中には、太い中華包丁で、繊細な飾り切りをこなす人もいる。長年の修練の末、中華包丁の利点も欠点も知り尽くした上で、その境地に達したというのであれば、それはもちろん素晴らしい。


が、単なる素人が「道具なんて関係ない! よくわからないけど俺は中華包丁で飾り切りするぜ!」と言い出したら、「おい、やめとけ」というのが親切というものだろう。


システムコンセプトを理解しようとせずに、なんでもかんでも「試行錯誤」しようとするのは、それと同じ意味で、お勧めできない*3

最近の感覚だと(極端に言うと)


・シティーアドベンチャーをするのはそもそもシステムコンセプトに合わないので、やめましょう


ということになると思われますが、昔の感覚だと


・それはGMがバランス配分を間違えたか、PLが対処を見誤っただけだろう。適切なバランスでちゃんとやればうまく行くはずなので、また練り直してやり直そう


になると思います。
「トライ&エラー」と何度も書いているのはそういうことです。
http://simizuna.exblog.jp/11351009/
(コメント欄)

昔の感覚であっても、「シティーアドベンチャー(なりなんなり)をしたいなら、それに合ったシステムを選ぶところから始める」は、常識だ。
システムコンセプトを検討せずに「GMがバランス配分を間違えたか、PLが対処を見誤っただけ」と結論を下すのであれば、俺だったらそういう卓には近寄りたくない。
これは昔も今も変わらない。

*1:理論上は、いちいちプレイしないでもルール読んで解析できればいいわけだが、プレイ経験なしで解析するのは、普通は無理なので、ちゃんと遊んだほうがいい。

*2:xenothも「D&Dで○○」とかは、よくやったが、今になって思うに、それはD&D以外のシステムをよく知らなかったというのが理由であって、それ以外ではない。

*3:xenoth個人の黒歴史として「D&D改造ジョジョの奇妙な冒険」「ソードワールド改造バスタード」とかがあり、若いうちは暴走も失敗も経験の内よ、という意味では、個人的に暖かい目で見たいが、一緒に卓を囲む人のことも考えるべきだろう。