謎のあるセッションをプレイする

要約

「謎」があるセッションをする際、謎を物語と捉えるか、ゲームと捉えるかで大きく変わる。
GMは自分のやりたいことが、どちらかを意識して、それをプレイヤーと共有する必要がある。

AGS様更新

会話型RPGのシナリオ・デザインのコツ――「謎」を活かす設定と構造、『Pathfinder RPG』編――: Analog Game Studies
AGS様で更新がありました。
齋藤路恵様の「1回のセッションにふさわしい謎のあるシナリオはどのようにしたら作れるのでしょうか? PCの追及を適度にかわす謎はどうしたら作れるのでしょうか?」という疑問を受けての、シナリオ制作講座です。


「謎」を、初期状況と、真相のあいだの欠落情報とし、それらの調査時間を設けつつ、調査に制限を加えてゲームとするという手法で、Pathfinderで行う場合のハウスルールで説明しています。
このルールは、FEAR系列のゲームの多くでは、情報収集判定としてルール化されているため、リプレイやシナリオなどで、お馴染みの手法ですね。


私も、基本、この方法論でセッションします。
その上で、単に情報収集してシナリオを進めるというのは、いわゆる謎解きシナリオだけでなく、ほとんどのシナリオに共通する話となります。


謎解きシナリオとは、どういうもので、そうしたセッションには、どういう注意が必要なのでしょうか?

二律背反

さて、そもそもなぜ、「謎のあるシナリオ」を作るのでしょうか?
答えは、基本的に、「プレイヤーを驚かせ、楽しませたい」からですね。
「おお、そうきたか!」「これはびっくり!」「なるほど、そうだったのか!」と思わせたいわけです。


そのためには「謎のある物語」を作って、それを順番にプレイヤーに見せてゆけばよいわけです。
具体的には、魅力的な謎を最初に提示して、ひとつずつ手がかりを見せてゆくわけですね。
「謎の状況」→「手がかり1」→「手がかり2」→「手がかり3」→「驚きの真相」
というわけです。


さて「プレイヤーを驚かせる物語」をやる場合、順番に話を見ていくから面白いわけです。
手がかりが出てくる順番が変わったら、驚きは台無しになりますね。
ですから、その際、シナリオ構造はある程度一本道にして、プレイヤーの動きを制御したほうがやりやすいでしょう。


一方で、謎解きをゲームとして捉える場合があります。プレイヤーとの知恵くらべ、知的パズルというわけです。
さて、この時、プレイヤーが、どういう順番、どういう方法で謎にアプローチして、どう解くかは決められません。
殺人事件なら警察に頼るかもしれないし、容疑者を暴力で尋問するかもしれない。精神支配の魔法をかけるかもしれない。
それらは極端な例としても、GMの考える「模範的な謎解きの筋道」どおりにプレイヤーが動いてくれることは期待できないわけです。


ですから、謎解きをゲームとするなら、プレイヤーの想定外の行動を受け入れる心構えが入ります。
むしろ、プレイヤーが思いついたことを積極的に支援して、プレイヤーと一緒に、調査手法を考える、という心構えが良いでしょう。

衝突

というわけで、謎解きシナリオを出したい時は、「美しい物語を見せたい」のか、「PLが謎を解決するゲーム」とするのかは、強く意識したほうが良いです。


GMが、自分が見せたいのが「美しい物語」なのか「パズルゲーム」なのかの区別がついていなくて、「さぁ解いてごらん」と言いつつ、プレイヤーの想定外の行動に対応できなかったり、ケチをつけたりして、つまらないセッションになるというのは、ありがちなことです。


同じようにGMが「美しい物語を見せよう」と思っていたけど、PLに伝わっておらず、PLが「何でもアリで謎を解こう」と思って、衝突になる、というのは、よくある悲劇です。
逆に、GMがPLにどんどん動いてほしいのに、PLが「美しい物語」の誘導を待って話が止まってしまう場合もあります。


いずれにせよ、「美しい物語誘導型」と「謎解きゲーム型」に、優劣はありません。
誘導型は、シナリオ構造が制限される分、美しい物語を作りやすい。
ゲーム型は、自主的に動ける分、美しい物語にはなりにくい。


どちらを行うにせよ、自分自身およびプレイヤーとの意識のすり合わせが大切である、ということです。

「1回のセッションにふさわしい謎のあるシナリオはどのようにしたら作れるのでしょうか? PCの追及を適度にかわす謎はどうしたら作れるのでしょうか?」

こちらの問いに戻るなら、それは「物語としての謎」か「ゲームとしての謎」かで変わります。


「物語としての謎」であるなら、PCが追求してきたら、さっさとシーンを変えて話を進めることです。巻きを入れて誘導を入れましょう。
「物語」であることが共有されているなら、プレイヤーもそこに不快感を感じないでしょう。


「ゲームとしての謎」であるなら、PCの追求はかわすべきではありません。追求させて謎を解かせましょう。その結果、想定するクライマックス前に謎が完全に解けてしまったら、プレイヤーを褒めたたえましょう。それがゲームというものです。