ルールシステムとその先にあるもの

想像力

TRPGはなぜ面白いかで、「TRPGの面白さは、参加者相互間の面白さである」と書いた。
TRPGのシステム自体や個々人の判断そのものが面白いのではなくて、それらから生まれる参加者相互のやりとりにこそ面白さがあるというものだ。


そこにあるのはつまり、他者をトークンやリソース、判断装置として見ることではなくて、自分と同じ人間であるとして、楽しもう、楽しませようという判断である。
相手の心を推し量ること、つまり、想像力だ。


プレイヤー同士、GM・プレイヤー間で、お互いに想像力を働かせることで、互いに楽しみ、楽しませようとする。それがTRPGの(TRPGに限らないが)良いところだ。
そうした相互の想像力は、最終的にはデザイナー、スタッフにも及ぶだろう。


良いデザイナーは「ルール的な完成度」や「批評的に優れた理論」ではなく、「それらを通して」プレイヤー、GMが面白く遊べることを目指す。そうなるように想像力を働かせる。


では、プレイヤー、GMは、デザイナーに対して、どのような想像力を働かせればいいか?

声援

デザイナーはどういう風に暮らしているだろうか。年収、月収はどのくらいだろうか。今困っていることはなんで、嬉しいことはなんだろうか?
将来設計は、ローンの組み方は……。


想像力を働かせているとキリがないわけだが、まぁそこはおいといて。
一つ言えるのは、そのデザイナーが「TRPGが好き」で、「TRPGの仕事をし続けたい」と考えていることだろう。
TRPGという人間関係の中で、デザイナーの気持ちを想像するなら、そういうことになる。


では、デザイナーが喜ぶことは、どういうことだろう?
TRPGが好きなんだから、自分のTRPGが楽しく遊ばれてるというのを知れば、嬉しいだろう。
TRPGの仕事をし続けたいんだから、次のTRPGが出せる環境になると嬉しいだろう。


あるTRPGを遊んで楽しかったのなら*1、そうしたデザイナーの気持ちに答える道を探せばいい。


といっても、難しいことではない。
そのゲームを遊んで面白かった、という報告をすること。直接のファンレターでもいいし、ウェブなどでの公開でもいい。
人間が物を作るのにあたって、モチベーションが、どれほど重要なことかは、GMをやったことがある人なら、よくわかるだろう。
それが、次の作品を出す環境を作ることに繋がる。


商業の場合は、次の作品を出せるかどうかは、作者のモチベーションに加えて、商業的評価、すなわち売り上げがある。
作品の商業的な評価を上げるためには、新品で、発売日に近い時点で買うのが効果的である。

結局お金なの?

ある作品や作者が好きだとして、次の作品が出ることを願うのなら、お金を出すのが、一番簡単な方法ということだ。


言い方を変えるなら、大切なのは労力であり、気持ちだ。
作者が作品を作り出す時には、労力がかかる。
それを支えたいと思うなら、我々自身も、体を動かし、頭を使ってサポートする必要がある。その第一歩が、まず、製品を購入するということだ。


もちろん、次の作品が出る環境を作ることは、製品を買うことだけではない。TRPGなら記事を書いたり、コンベンションを開いたりすることも意味があるだろう。極端な話をするなら、富士見書房エンターブレインの経営に介入したっていい(笑)
まぁただ、そこまでやる人は、製品くらい買っているだろう(笑)


TRPGの話で始まったが、もちろんTRPGに限る話ではない。
本一冊読む時でも大根買う時でも、それが自分に届くまでに関わった人間に思いを馳せてみることは大切だ。


不況の昨今、財布がつらいのはお互い様と思うが、「これは素晴らしい!」と思う作品は、身銭を切って買うこと。
それは心意気だと思うのだ*2

*1:つまらなかったなら、無理して誉めたり援助したりする必要はない

*2:逆に、「この会社は素晴らしい!過去作品を復刻してくれるのはありがたい!友人からもらったよ!」とか「このゲームは素晴らしい! ジャンルに新しいものを付け加えるすごい作品だ!値崩れ待つぜ!」的な発言は、まぁ黙っておけばいいと思うのだ