用語と定義・悪い例

用語の定義とそのコスト

議論において独自の用語を定義することがあるが、独自用語というのは基本的にわかりにくい。増えれば増えるほどわかりにくくなる。
わかりやすさの面から言うと、ないほうがいい。


一方で、専門用語が必要な場合がある。
・日常の用語にない概念の場合
・日常の用語にある概念だが、より細かい定義、場合分けをしたい場合
おおざっぱに言って、この二つである。
逆に言うと、日常の用語で済むところに、どんどん独自用語を出す議論は、質が悪い。

「量的情報」と「質的情報」

http://d.hatena.ne.jp/gginc/20100822/1282520395
というわけで、こちらの論考である。


まずここで言う「量的情報」とは、能力値、その他、ゲームに関するデータのことである。「質的情報」とは、世界設定に関連する情報である。


問題はネーミングだ。
ゲームデータでも、単純に「量」と呼べないデータは多々ある。
「筋力:12」は、確かに「量」と呼べるかもしれないが、「クラス:ファイター」は、日本語では「量」とは言わないだろう。


同様に、質的情報にせよ、「量」が入ることも多い。
「筋力:12」を「量的情報」と呼ぶのなら、「身長:175cm」や「町の人口:5千人」だって、「量的情報」に入りそうだ。


「量」と「質」という単語、対比を思いついたのはいいが、そこで思考停止しているから、こういうことになる。
これ以降も、「量」と「質」という言葉を使うことによるメリットは全くない。


こんなのは「システム上のデータ」と「設定情報」でいいだろう。そのほうがわかりやすいし、説明しやすい。


日常の用語で説明できるものに、無駄に独自用語を当てはめるから、文章がわかりにくく不毛になる。

ギミックマニュアル

シナリオとは、プレーヤーの繰るPCたちが、おおむねどのような状況に置かれており、どのような人・モノ・事件とめぐりあい、どのような課題を解決するのか……といった、一連のゲーム的仕掛けを記した手続き書のことです(=「シナリオ」の定義)。なお、このシナリオのゲームデザイン的加工の面を強調する為、筆者は〈ギミック・マニュアル〉と呼んでいます(以後は「シナリオ」を指し示す語として、「ギミック・マニュアル」を用いることにします)。

「シナリオ」というと、固定した脚本を連想するが、TRPGのシナリオというのは、一般には、こういうイベントが起きて、対応次第で、こういう結果になるよ、というギミックの連鎖である、ということが言いたいのだろうけど。


今日日、コンピュータRPGでもノベルゲームでも「シナリオ」というわけだ。DQ9のシナリオは……と言った時に、「一本道脚本」を連想はしまい。
あくまでシナリオという言葉を使いたくないとして、では、「ギミック・マニュアル」のマニュアルとはなんだ?


マニュアルとは、参考書、説明書、手引き書、そう言った意味である。
ギミックマニュアルというのなら、ギミック一般について説明した文章であるべきだ。
言い替えるなら、「シナリオの作り方」的な本ならば、ギミック・マニュアルと呼べないこともない。
一方で、一個のシナリオを「ギミック・マニュアル」と呼ぶのは、意味不明である。
和製英語の「マニュアル」としてもおかしいし、無論、英語としてもおかしい。


結局、わけのわからない言葉を一個増やした自己満足でしかない。


シナリオとして、それに補足をつければよいと思うが、仮に新しい用語を定義するとしたら、そうだな、セッション・プランとかどうだろう?
少なくとも、「ギミック・マニュアル」よりはピンと来るのではないか。