コンセプトと分化

http://simizuna.exblog.jp/12484949/
紙魚砂さんがこちらで、PvP(プレイヤー同士が対立するパターンのセッションを可能とするシステム)が、すたれた原因に関して、考察されています。


さて、娯楽ジャンルにおいて、嗜好が確立されてゆくに連れて、細分化が起きるというのは、よく知られています。
ゲームでも漫画でも、似たようなものばっかりじゃ飽きるから、それぞれの作品は、互いに個性を出そうとする。時間が経つにつれて、どんどんそれが細分化して、細かいニーズに対応してゆく、というものです。


TRPGでも同じことは起きていると思います。
すごく昔はD&Dが(あるいはSWが)あって、みんな、それを遊んでいた。それしかなかったので、D&Dの中で、色々な遊び方をした。
D&Dでダンジョン潜ったり、街を巡ったり、ラブコメしたり、犯罪を解決したり、恐怖を体験したりしました。


それを見て、他のメーカーも、それぞれに対応したTRPGを出してゆきます。先行作品であるD&D(なりSWなりなんなり)に対抗するために、狙いを絞ってきます。
かくて、ホラー専門のTRPGや、シティードラマを強く意識したTRPGが生まれてゆきます。


これには、もう一つ効用がありまして、TRPGというのは、全員でイメージを共有する遊びですから、それぞれのイメージがぶれてると、うまく遊べません。
D&Dなのはわかったけど、ダンジョン潜るの? 街で交渉するの? それとも……」というよりは、「クトゥルフだから恐怖RPGだね!」といったほうが、まとまりやすい*1


特にPvPというのは、一個間違えると、卓が破綻する遊び方ですから、ある人が、「このシステムはPvPもあり」と考えて、別の人が「PvPは基本なしだよね」と思っていて、その解釈がすりあわされないまま、遊ぶとエライことになります。それでTRPGをやめちゃう、みたいなこともあるわけです。


イメージ統一だけでなく、システム面の問題もあります。
協力型でデザインするTRPGの場合、PCごとに担当範囲が異なります。ファイターがいて、僧侶がいて……みたいな話になる。「各自が協力して、専門を分担する」ゲームで「誰か一人が裏切る」ことを前提にすると、何もかもが壊れてしまいます。
PvPをやるには、「一人である程度何でもできる」ゲームのほうが、望ましい。
そういうわけで、「どっちもできるシステム」というのは、(できないわけじゃないけど)難しい。


そういった理由から、「PvPもできるシステム」というのは、ユーザーからすると手を出しにくく、メーカーも売りにくい。
作るなら「PvPを目玉とするシステム」にして、そうでない場合は、はっきり「PvPは、やらないシステム」としておいたほうがいいだろう、と。


で、「PvPをメインとするシステム」の数が、あまりない理由は……作り手の趣味等、色々あると思いますが、ぶっちゃけると、「売れない」からではないかと思います。好きな人は好きだけど、あんまり数が出そうにない。


逆に言うと「シノビガミ」みたいなPvP的な要素を強く意識し、フューチャーしたTRPGが出てくる、というのは、全体の層が育っていることの証拠かもしれません


もちろん、それは「シノビガミ」を作り、売ってゆこうとする方々の努力あってのことです。「サタスペ」「まよキン」と、PvPの的なシステムを作り上げ、システムのノウハウと客層を掴んだ努力の結果でもあると言えるでしょう。


当たり前の話ですが、頑張った人がいて、その結果があるのだなぁと思います。

*1:おおざっぱな議論ですよ、もちろん