小説とリプレイと力点とペース

小説のペース、漫画のペース

小説が漫画化されることがある。
外伝とかではなく、小説のストーリーをそのまま追うタイプの漫画化の場合、1冊の小説は、数冊から場合によっては十数冊の漫画となる。


同じ量のプロットを消化する場合、小説のほうが少ないページ数で処理できる(場合が多い)と言えるだろう。


これは小説と漫画の優劣の話ではない。
ある出来事を文で表現するのと、絵で表現するのは、絵のほうがスペースを必要とする、ということだ*1
文で表現することの可能性、絵で表現することの可能性は様々に存在する上で、単に進み方のペースが違う、というだけだ。

リプレイのペース、小説のペース

似たような話になるが、小説1冊分のプロットをリプレイで忠実にやろうとすると、多分、十数冊以上、かかってしまう。


なぜかというと小説は、状況の描写、キャラクターの描写を行えばいい。
一方リプレイは、それに加えて、プレイヤー、GMが何を考えてどう動いてるかの説明が入り、ゲームシステムがどう動いてるかの説明も入る。
また、説明、描写の全てが会話と応答で行われるため、ページごとの物語進行のペースは小説よりも遅くなる*2


これも、ペースの違い、得意分野の違いである。
小説は、「小説世界で何が起きてるか」の描写に力点を置く。
一方リプレイは「世界で何が起きているか」の描写も行うが、「TRPGの面白さ」を伝えることに力点を置いている。


そのため、「小説世界で何が起きてるか」については小説のほうが力点を置いている分だけ、密度が高く、重厚にしやすい。

重厚さとは

http://d.hatena.ne.jp/Akira_u/20081031#1225425613


以上、こちらのブログのエントリーを読んで、ふと思いついたことでした。
ここで書いたように、世界内の出来事について小説の描写がリプレイの描写よりも重厚になるのは、媒体の特性ですね。
また、新シリーズ第一巻の、起承転結の「起」の出来事と、大長編123巻にして、ようやくなったメインキャラの王位戴冠を、そういう風に比べてしまったら、それは思い入れの面で見劣りするでしょう。不幸な読み合わせだったと思います。


そういう状況にも関わらず、プレイヤーとGMの面白さが伝わってくる、というのは、相当いいリプレイなんでしょうね。買って来ようっと。

*1:もちろん、出来事の内容によっては、絵のほうが短く表現できる場合もある。つきつめていえば、個々の作品によって全部異なるわけなので、大ざっぱな話である

*2:ちなみに「世界の描写」に関して、TRPG、リプレイでできて小説でできないこととして「ゲームシステムによる描写」というテクニックがある。これはこれで面白いものである。