とあるブログです

id:D-yamashinaさんに言及いただきました。id:D-yamashinaさんは、しばらくTRPGに触れられてないご様子で、幾つか、事実誤認があるようです。

『深淵第2版』は、97年にホビージャパンから発売された作品のリメイクです。『D&D日本語版』が最初に発売されたのは1985年のこと。『ウォーハンマーRPG』が翻訳出版されたのは1991年、『クトゥルフの呼び声』は1986年発売です。『アルシャードff』は2002年に発売された『アルシャード』の改定新版にあたる作品ですし、『アルシャードガイア』は同じシステムを使用するスピンオフ的な作品です。『セブン=フォートレス メビウス』は『セブン=フォートレス』シリーズの第4バージョンで、これまたリメイク作である『ナイトウィザード The 2nd Editon』と同じルール体系になっているのが特徴。2003年に発売された『六門世界RPG』のルールを大幅に変更し第2版として生まれたのが『六門世界RPG セカンドエディション』です。

リストの中で、完全新作のタイトルは『エムブリオマシンRPG』だけでした。

偶然なのかもしれません。私が見たときの新製品情報がたまたま偏っていただけかもしれません。しかしここまで極端ではなくとも、発売されているTRPGのうち、相当の数を「リメイク」製品が占めているのではないでしょうか。ここでは、そうだと仮定して話を進めます。

http://d.hatena.ne.jp/D-yamashina/20080305/1204725978
「リメイク作品」が相当数ですか。
これだけ読むと、例えば、「ネタがなくなった業界が、昔の作品を無理矢理、現代風に直して、ノスタルジーに浸るマニアに訴えて、過去の資産を食いつぶしてる」みたいな印象を受けますよね。


「深淵」みたいに、しばらく発売してなかったゲームが、久々に新システムで発売、というゲームは「リメイク」と言ってよいと思います。『深淵第2版』はいいゲームですが、もし新作が全部そういうのばっかりだったら、確かに「TRPG業界ネタ切れじゃないの?」と言われても仕方ないかもしれない。


ですが、挙げられたゲームの内、『セブン=フォートレス』や『ナイトウィザード』『六門世界RPG』なんかは、売れ続け、プレイされ続けているゲームのバージョンアップです。人気の老舗システムのサポートが続いているだけです。「D&D」や「クトゥルフ」も日本での展開は、期間が時々空いていますが、アメリカでは継続した展開の一貫ですね。
つまり人気が継続してるので、第二シーズン、第三シーズンと続いている、という感じです。両方を「リメイク」でくくると、間違った印象を与えると思います。


で、完全新作は出てないのでしょうか?
2007年の完全新作システムは、プレイスペース広島の発売情報を、ざっと当たったところでは、以下の通り。
・『ボールパーク!』
・『大帝の剣RPG』
・『風の聖痕RPG』
・『ナイトメアハンター・ディープ』
・『エムブリオマシンRPG』
・『とらぶるエイリアンず
・『あいつはクラスメート!
・『りゅうたま
12ヶ月で、8本を多いと見るか少ないと見るかは、おまかせします。なお、ここでは完全新作には含めませんでしたが、プレイヤー的には「シャドウラン4th」や「ウォーハンマー」なんかも立派に新作であり、新作に不自由した1年とは感じませんでした。

当然ながら疑問が生まれます。「なぜ、こんなに新作が少ないのか?」と。

もっと踏み込んで言うなら、「なんで、私がTRPGしていた頃とあんまり変わり映えがないの?」と。

そこで、自分なりに導き出したのは「もしかしたら、TRPGをプレイする人々はもう何年も変わっていないのではないか。新規参入者をほとんど獲得できていないのではないか」という推論です。

先も述べた通り、非新作というのは、別に、昔からの古いファンのノスタルジーを当て込んだものではありません。
D-yamashinaさんが、TRPGを遊んでいたのがいつ頃かわかりませんが、よろしければ「D&D」を、ひもといてみると良いと思います。
新和の頃の、あるいは、電撃文庫の頃のD&Dとは全く違っていることに気付かされるでしょう。
D&D」は(そして他の多くのシステムは)、名前と基本こそ継承していますが、毎年進化を続け(そして進化しなかったものは淘汰され)、その中で、常に新しいユーザーを獲得すべく頑張っています。


各種TRPGが「リメイク」というか版上げしているのは、新しい客層を積極的に取り込むためなのです。

とあるブログで、「1980年代後半〜90年代前半のTRPGブームは一過性のものであり、現在の状況こそが身の丈に合ったTRPG市場だ」という意見を読みました。日本のテーブルトークRPGのプレイ人口は今までまともに調査されたことがありません。ですから、正確な数字は誰も把握していないのですが、出版点数やコンベンションの開催数から推測するに、現在のプレイ人口は最盛期よりも減少しているとするのが一般的な見解です。

大変、芸のないツッコミで申し訳ありませんが、「最盛期より減少」というのは「最大値よりは少ない」という意味ですよね。それって、普通じゃないでしょうか。


つまりTRPGじゃなくても、野球でもサッカーでも何でもいいんですが、およそ、この世のありとあらゆる集団について、今現在が最盛期でない場合以外は、「最盛期より減少」してるんじゃないでしょうか。


さてTRPGは、今、この瞬間が、最盛期ではないかもしれませんが、プレイ人口や、出版点数は、少しずつ上向いています。


そうですね、一例として、富士見ドラゴンブックスの刊行点数を見てみましょうか。文庫ってのは、全国の本屋に並ぶので、わりと指標になりやすいです。
http://www.e-hon.ne.jp/bec/EB/Top
の検索で、ドラゴンブックを引き、ナンバーで確認しました。一部番号がずれていたり、欠番などもあるかもしれないので正確ではありません。特に1987年から94年は結構いいかげんですが、まぁ目安として。

1985 3-1 =3(ゲームブックブーム)
1986 13-4 =10
1987 27-14 =14
1988 60-28 =33
1989 90-61 =30(ソードワールド発売)
1990 91-109 =19
1991 110-133 =24
1992 134-147 =15
1993 148-164 =17
1994 180-165 =14
1995 200-181 =20(マギウス発売)
1996 220-201 =20
1997 238-221 =18(マギウス終了)
1998 248-239 =9
1999 255-249 =7
2000 258-256 =3
2001 261-259 =3
2002 270-262 =9
2003 283-271 =13
2004 294-284 =11
2005 308-295 =14
2006 332-309 =24
2007 360-333 =28


2000年、2001年の3冊とか見ると、わりと涙が出ますね。TRPG冬の時代というのは本当にえぐかったんだなぁ。
さておいて、調べて見て驚きました。
2007年は、富士見ドラゴンブックの刊行点数は28冊。この数は、マギウス展開期より上で、ソードワールド最盛期の頃に匹敵します。このままいくと2008年は、さらに増えて逆転するかもしれません。全国の書店にTRPG関係の本が、毎月定期的に2冊以上並び、かつ、それが、一部のマニアとかではなく全国で買われているという状況があるわけです。


TRPG、わりと最盛期なのかもしれませんね。
もちろん富士見ドラゴンブックの刊行点数が全てではありませんが、しかし、指標としてはそれなりに有効でしょう。「TRPGは、現在不調で、新規ユーザーが入っていない」と言い切るのは無理がある、くらいは言えそうです。