TRPGと「ゲーム性」

TRPGはゲームか?

よくある議論だが、これではじまる議論は、たいていの場合、迷走しているパターンが多いと思う。


「ゲーム」が何か、というのは定義次第である。とりあえず、この論考では、ゲーム性は、リソース管理を前提とする戦術性くらいに捉えておこう。
で、その特定の定義にTRPGが当てはまるかを語ることはできるが、問題は、「それに何の意味があるか?」「それをもって何を証明するか?」である。


つまり、「TRPGはゲームじゃない!」あるいは「TRPGだってやっぱりゲームだ!」と言って、その後、どうしたいの?という話だ。


こうした議論は、たいてい「TRPGはゲームなのだから、もっとゲームすべきだ」とか「TRPGはゲームじゃないんだから、ゲームはいらない」といった議論に発展しがちである。
が、これは論理的には間違いである。


なぜなら、「TRPGが特定定義のゲームにあてはまるかどうか」というのは、「TRPGがどうあるべきか?」という命題とは、まったく関連しないからだ。
「リンゴが紅いか?」「リンゴがどれくらい紅いか?」という命題に、どういう結論が出ようが、「リンゴは、より紅くなるべきだ!」という結論にならないのと一緒である。

TRPGは娯楽である。

というわけで、議論の目的を確認しよう。


1.TRPGは娯楽である。
2.娯楽の目的は、面白いことである。
3.よいTRPGは、より面白いTRPGである。
おおざっぱすぎる論法だが、大筋では間違ってないと思うので、ここでは、3を採用する。


この理論からすると、「TRPGはゲームか?」あるいは「TRPGの持つゲーム性」は、「TRPGをより面白くする役に立つか?」という点において、はじめて意味を持つ。


さてさて。TRPGの面白さの要因は、様々である。その中には、いわゆるゲーム性、戦術性から来る面白さもあり、それ以外の面白さもあるだろう。
より面白いTRPGを考えるのであれば、「TRPGの面白さの中で、ゲーム性が果たしている役割を理解し、それによって全体の面白さを引き上げる方法を考えよう」ということになる。


xenothのイメージだが、面白さというのは、役みたいなものである。
「ゲームが面白い」「設定が面白い」「演技が面白い」「イラストが楽しい」みたいなのが、うまく重なって相乗することで、「TRPG独自の面白さ」が生まれる。逆に、「ゲームが面白い」だけが突出していても、手役としてはブタってこともありうる。


TRPGの面白さをゲーム中心に語りすぎると、どうしても、「TRPGはゲームとしては二級品」って話になりやすい。そりゃそーだ。囲碁将棋各種ボードゲームのように、最初からゲームとしてのみ設計されてるもののほうが、ゲームとしての完成度は優れている。


逆の話、TRPGの面白さを理解したいのなら、「ゲームでない部分の面白さ」に注目するべきだろう。その上で、そうした「ゲームでない部分の面白さ」を、どうゲームパートが相乗するか、という議論をすべきである。

「TRPGと複雑な物語性」は、そのへんの面白さについて、少しだけ分析してみたものである。
こうした議論がもっと出てくれると嬉しい。
http://d.hatena.ne.jp/xenoth/20071217/p1
http://d.hatena.ne.jp/xenoth/20071218/p2
http://d.hatena.ne.jp/xenoth/20071223/p1