GMに還流するビジネスモデル?

http://d.hatena.ne.jp/gginc/20071204/1196749425
こちらより。

TRPGの不完全性?

 TRPG市場においてなぜこのような齟齬が起きるのか。それは、ロールプレイング・ゲームにおいて商品・サービスの中心となっている〈システムデザイン〉が、本質的に不完全な商品・サービスだからである。その不完全さは、〈ゲームマスター〉によって埋められなければならない。

まず、流通商品と別のものが遊ばれるのは、TRPG業界に限らない。
ボードゲームでもコンシュマーゲームでもあるし、そもそもゲームに限らない。絶版だが人気の本とか漫画とかあるでしょ。
流通的に「死んだ」作品が人気が出ること自体は、別にTRPG独特でもない。
そして「不完全さ」についていうなら、ボードゲームだって十分不完全だ。
ルールにそって動かすこと自体は初見で出来るとしても、熟練プレイヤーが遊んだ場合の面白さは桁が違う。熟練プレイヤーでないと面白さを引き出せないゲームも、よくある。TRPGだって、敷居が低いゲームもある。その程度の問題だ。

消費期限の短いシステム?

 そのようなわけで、「システムデザイナーに金が入らないほど良いシステムは、本当に良いシステムなのか」というジレンマが、今のTRPGシステムを設計する際にたちはだかる。それに苦しむよりは、一つ一つのゲームの消費期限が短い代わりに、細やかで充実したサポートを雑誌やサプリメントで次々と行う(その細かいコンテンツから得た収入を企業の収入源と捉える)サービスの方が市場育成にとっては効果的である。そのようなサービス形態は既にF.E.A.R.社によって確立されている。*1コンテンツを売り続けなければならない経営側の判断としては、当然のなりゆきであると言える。

わざと短い消費期限を設定する商品を望んで作る企業があるとは思えない。
確かに特定のシステムに満足して他のゲームを遊ばないゲーマーもいるにはいるが、たいていのゲーマーは、新しい刺激を求めていて、そして人間の常として飽きっぽい。
出した商品を、精一杯サポートして少しでも商品寿命を延ばそうとする中で、商業的に人気のないものから切られてゆく、というのが正しいだろう。


そもそもサポートが途切れてもプレイされるような長寿ゲームを作れるものなら、皆、作るはずだ。なぜなら、そうしたゲームは、例外なく市場を大きく拡張させたのだから。旧ソードワールドや、新和D&Dを狙って出せるんだったら、何度でも出したいだろう。そもそも旧ソードワールドにせよ新和D&Dにせよ、当時、思いっきり、サポートされまくったゲームである。サポートで金を稼ぐ方法論は、長寿ゲームにも使えるのだ。


もちろん一般受けしなかったが、一部で愛好されるゲーム、というのはもちろん存在する。ただそうしたTRPGが「市場メカニズムを前提としない、高度かつマニアックな遊び方をプレイグループの間で志向させやすい構造」になっていたかというと、疑問が残る。というかFEAR社のサポートが切れたTRPGだって、そうやって遊び続けてる人はいるわけだし。

GMへの還元?

 最終的にゲームの面白さを生み出すのは、〈システムデザイナー〉と〈ゲームマスター〉の両方である。サービスとして、商品として価値のある「ゲーム」を生み出しているのは、どちらか一方だけということはない。これは自明のことであると言って良いだろう。*2

 しかし、結果的に、「金を支払うことでTRPG市場の発展に貢献する」という方法が通用するのは、今のところ「システムデザイナーに金を支払う」という行為だけである。もう一人の「現場のゲームデザイナー」であるところのゲームマスターに金が入ることはない。

ゲームマスターが報われること、プレイ技術が受け継がれることは望ましい。
が、別に金銭でなくても良いと思う。


世の中、プロがやったほうがうまく回るものと、アマチュアが趣味に走ったほうがうまくいくものある。
プロ、システムデザイナーの側からGM技術を還元して商業ラインに載せる方法論は、既に膨大なものがある。各種リプレイやプレイガイドが存在するし、また、そうしたプレイテクニックを組み込んだシステムも数多い。
システムデザイナーは、基本的にGMであるのだから、GMvsシステムデザイナーという対立項を作る必要はない。


プロでないGMの貢献は「アマチュアが趣味に走ったほうがうまくいく」ラインだろう。ハッカーオープンソース文化、ミュージシャン文化、ニコ動なんかのラインが参考になる。
そうしたGMの貢献は既にウェブ上に膨大に存在している。
安直な例をあげるなら、プレイ記録やらテクニックやらが、ニコ動的に参照、共有できるインフラがあれば、そうした文化はより発達するだろう。


ニコニコで始まりかけているように、企業側が、そうしたアマチュアからのアプローチと連動できれば楽しいことになるだろうし、現在のTRPGシーンを活性化することになり、ひいては「死んだ」システムの復活にもつながるあろう。