『冒険王道』と遊ぶということ

子どもたちにダイスを。
こちらは、小学校でのクラブの時間(選択授業みたいな感じで時間割にあるそうです)で、TRPGクラブをされているほくろんさんのページです。
実際のプレイのレポートと、そして小学生と遊ぶためのオリジナルシステム『冒険王道』が公開されています。


子供たちと一緒にキャラメイクしてセッションをするところから初めて、ダンジョン=シナリオを作ってもらって、さらに子供たちが自分でGMするところまでのレポートは、もう面白いしタメになるし、じーんとするし、で、えらいことに!*1

はじめてのTRPGとノウハウ

xenothもTRPGのマスターとして、はじめてTRPGをプレイする人とはどう遊ぶのがいいか、年少の人と遊ぶ時は何が大切か、というのは、それなりに考えたことがあります。
ちょっとでもそうしたことに関心がある方は、こちらのページは隅から隅まで超必読ものです。


当たり前の話ですが、「子供とどう遊ぶか」を頭で考えても限界があるわけで、毎日、毎週、子供と接して、実際に遊んでる人の経験にかなうものであはりません。
そのノウハウが、すごくいい形に、ぎゅっとまとまっていて、大変にありがたく、素晴らしい。


また、(ゲームブックの時にも書きましたが)子供たちが本当にTRPGを楽しく遊んでるところを見ると、TRPGそのものの可能性の豊かさに、再び胸を打たれます。

蛇足めいた分析

プレイレポートもルールも素晴らしいので、まず読んでほしい気持ちでいっぱいで、分析めいたことを書くのも気が引けますが、二、三思ったことなどを。


プレイレポートを読んで思ったのですが、はじめてTRPGを遊ぶ子供たちは、こりかたまった常識を持っていません。
色々とこちらが予期していない角度の発想や行動もしてくる。


もちろん常識は、守るべき意味があるから常識であるという側面もあるわけで、子供たちの行動や発想を全部受け入れると破綻してしまいます。
プレイレポートでは、そうした点について指導される方々が受け入れたところ、否定したところ、またそれについて悩んだところが克明に記してあって大変に参考になります。


さて「常識には意味があるんだ」を伝える際には「なぜ、この常識はこうなのか」というのを、しっかり把握している必要があります。
「常識だから常識なんだ」というのはゲーマー同士の間だと案外通じたりするわけですが、それじゃいかんわけです。当たり前ですが。


なぜ、あるプレイはOKで、別のプレイには「それはちょっと待ってね」と言わなければならないか。そこにおいて、レポートではTRPGという遊びの基本の基本に何度も立ち戻ります。
ルールが正しければ良いのか、判定が有利ならよいのか。設定が一貫してればよいのか。
そうではなくて、一緒に楽しむのが良いのか。楽しむとはどうすることなのか。協調とは何なのか。


それらの先には、商業・同人を含む現在までのTRPGが(泥試合や宗教戦争のはてに)積み重ねてきた、(ゴールデンルール等を始めとする)様々な理論がバックボーンとして存在するわけで、それらが、レポートやルールに反映されているのも、大変に面白い。
また、そうしたTRPGの様々な性質が子供たちの学習や指導の理論とも関連しており、これも興味深い点です。
しかもそれが、実際の子どもたちとのプレイの中で語られている関係で、超実践的な内容になっている。


私が面白いな、と、思ったのは、子どもたちにダイスを。 |牛小最終回 こぼれ話の逸話。

ルイス:このタンス開けるー。
GM :これ? これを開けるとね……10G入ってる。
バクラ:え、いくら?
GM :10G。
バクラ:えー! 3人で割れないじゃん!
GM :じゃあ12G。
ルイス:よっしゃー!

これが小話のポイントです。
6年生とはいえ、瞬時に3の倍数に変更したGMがすごい……
……だけではなく。
GMの躊躇ないこの対応に、以前少し触れました「物語内の整合性」か「プレイ場面」かという分かれ目が見えてきます。

ナイス! 6年生のGMさん、超ナイス!


このやりとりは、あぁいいなぁと思うと同時に、このことをどう評価するか、という疑問を考えるには、こちらの記事で、ほくろんさんが述べている通りTRPGというゲームの根本について考える必要があります。

楽しいことからはじめよう

なんか小難しいことを書いてしまいましたが、なにより、これ、すごく楽しそうなんですよね。
透明なカードスリーブつきのキャラクターシートで、アイテムカードとかを入れて完成!とか、やってみたい。


遊びは面白くなければ意味が無いし、その面白さを前提とする中に、様々な意味が見いだせる。
子どもたちにダイスを。 |判定と相談
こちらの記事がまた面白くて。
ダイスを振る面白さから、協力や分担の面白さに至る流れが書かれていて、「そうだよ! そうだったんだよ!」と大声で言いたくなる気持ちになります。


「子どもたちにダイスを」は、実際に子どもや初めての方とプレイする時に役立つのはもちろん、TRPGてなんなんだっけ、というのを考える時、さらには、もう一度TRPGの面白さを初心に返って考えたい時にも、必読です!

*1:読んだxenothが。